鶏舎屋根および貯水タンクにおける温度低減効果の実測と算定
施工事例(茨城県内の養鶏農場)
| 物 件 名 | 対象農場鶏舎5棟(小波トタン屋根)および貯水タンク7基 |
| 所 在 地 | 茨城県内 |
| 試 験 日 | 2026年8月20日(木) |
| 試験箇所 | 5号棟 屋根の一部(試し塗り)/5号棟 屋根上の貯水タンク |
| 報告書発行 | 2026年8月20日 |
ドローン搭載赤外線カメラによる空撮サーモグラフィ。5棟すべての屋根が黄色~白(高温)に写るなか、赤矢印の先=5号棟の試し塗り箇所のみが紫(低温)にはっきりと分離している。
| 本報告書は、実際に現地で施工・測定した数値に基づき、鶏舎内の温度および貯水タンクの水温が どの程度低減されるかを算定したものです。計算に用いた式・数値・前提はすべて本文に明示しており、 第三者が検証できる形で記載しています。 |
2026年8月20日、対象農場5号棟の屋根および屋根上の貯水タンクに遮熱塗装の試し塗りを行い、 未施工部との温度を実測しました。その結果と、実測値に基づく算定結果は次のとおりです。
1-1. 鶏舎内の温度低減
| 夏の日中(実測で確認) | 真夏晴天のピーク時 | 最も過酷な条件 |
| ▲3.0℃ | ▲4.5℃ | ▲7.7℃ |
| 室内側天井 34℃ → 31℃ | 算定値(外気35℃想定) | 算定値(加速試験相当) |
※「▲3.0℃」は測定によって実際に確認された値です。ピーク時以降は、その実測値を基準に算定した予測値です。
1-2. 貯水タンクの水温低減(日中の水温上昇の抑制幅)
| 対象タンク | 容量 | 材質 | 基数 | 日中の水温上昇の低減 |
| ① 600×600×H550 | 198 L | 樹脂 | 5基 | ▲6.0℃ |
| ② 700×900×H800 | 504 L | 樹脂 | 1基 | ▲4.3℃ |
| ③ 2000×2000×H2500(黒)※今回未施工・算定値 | 10,000 L | 鉄 | 1基 | ▲2.1℃(半量時 ▲4.1℃) |
鶏の飲水適温は20℃前後とされ、水温が25℃を超えると飲水量が低下します。飲水量の低下は飼料摂取量の低下、 ひいては生産性の低下と暑熱ストレスの増大につながります。水温を4~6℃下げることは、暑熱期の飲水量維持に直接寄与します。
1-3. 省エネルギー効果(屋根の遮熱による換気動力の削減)
| 項目 | 算定値(5棟合計・年間) |
| 屋根から侵入する熱の削減量(ピーク時) | 631 kW(家庭用エアコン約225台分の冷房能力に相当する熱量) |
| 年間削減電力量 | 14,670 kWh/年 |
| 年間削減電気料金 | 約 366,750円 ~ 440,100円 |
| 年間CO2削減量 | 約 6.3 t-CO2/年 |
※換気設備(強制換気)の動力低減分です。貯水タンクは電力を使用していないため、この数値には含みません。
| 本報告書の使い方について。 上記の数値は、いずれも算出過程を本文(6章~8章)に記載しています。 補助金・助成金の申請にあたっては、計算式・前提条件・出典をそのまま転記いただけるよう構成しております。 |
2-1. 試験の目的
鶏舎屋根および貯水タンクへの遮熱塗装によって、①鶏舎内の温度と②飲用水の水温が どの程度低減されるかを、実際の建物で測定により確認すること。
2-2. 対象建物の諸元
| 項目 | 数値 | 備考 |
| 棟数 | 5棟 | 今回の試し塗りは5号棟 |
| 屋根形状 | 切妻・小波トタン | 断熱材なし(屋根裏面がそのまま天井面) |
| 1棟の長さ | 77.0 m | — |
| 屋根の流れ長さ | 4.2 m(片面) | 両面で 8.4 m |
| 屋根面積(1棟) | 646.8 ㎡ | 77.0 × 4.2 × 2面 |
| 屋根面積(5棟) | 3,234.0 ㎡ | 平面数量 |
| 建屋高さ(軒高) | 2,800 mm | 低層 |
| 換気方式 | 強制換気 | 換気扇による機械換気 |
| 飼養状況 | 鶏 在舎 | — |
2-3. 試験箇所
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| 試し塗りを実施した5号棟 | 対象農場 全景(鶏舎5棟) |
2-4. 試験時の気象条件
試験当日の気象記録(茨城県内) | 測定日時 2026年8月20日 場所 茨城県内 外気温 33 ℃(体感温度 35℃) 湿度 58 % 風速 10 km/h 天候 晴(雲の往来あり) |
| 測定条件に関する重要な記載。 午前中は快晴でしたが、測定を開始した時間帯に雲が広がり、 日射量が低下しました。日射が弱まると屋根そのものが熱を受けないため、施工部・未施工部ともに温度が上がらず、 差が現れません(=遮熱性能の問題ではなく、比較対象となる熱そのものが存在しない状態)。 そのため本報告書では、日射が安定していた時間帯の測定値と、 ハロゲンランプで一定の熱量を与えて条件を揃えた比較測定の双方を採用しています。 |
2-5. 測定方法
赤外線サーモグラフィカメラを使用し、同一機器・同一時刻に、施工部と未施工部を比較測定しました。 本報告書に掲載する写真は、すべて可視光写真(可視光)と 赤外線熱画像(サーモ)の対で構成しています。
快晴から一転して雲が広がった | なお、掲載している測定値は、日射が安定していた時間帯に取得したもの、 および施工部・未施工部の双方へハロゲンランプで同一の熱量を与えて条件を揃えたものです。 雲により日射が遮られた時間帯の測定は、屋根そのものに熱が入っていないため施工部・未施工部ともに温度が上昇せず、比較の意味をなさないことから採用しておりません。 本報告書に記載の時刻は、すべて測定機器の表示時刻によります。 |
3-1. 実測データ一覧
| 測定箇所 | 未施工部 | 遮熱施工部 | 差 | 測定条件 |
| 屋根 表面(表側) | 47 ℃ | 33 ℃ | ▲14℃ | 自然日射 |
| 屋根 表面(表側) | 90 ℃ | 54 ℃ | ▲36℃ | ハロゲン加熱 |
| 屋根 裏面(外側) | 42 ℃ | 34 ℃ | ▲8℃ | 自然日射 |
| 室内側 天井面 | 34 ℃ | 31 ℃ | ▲3℃ | 自然日射 |
| 貯水タンク 裏側 | 55 ℃ | 35 ℃ | ▲20℃ | ハロゲン加熱 |
※外気温33℃に対し、未施工の屋根表面は外気+14℃、遮熱施工部は外気と同じ33℃まで抑えられました。
3-2. 屋根表面(自然日射下)
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サーモ 未施工部 約47℃ 外気温+14℃まで上昇している | サーモ 遮熱施工部 約33℃ 外気温と同水準に抑えられている |
※画面内にハロゲンランプが写り込んでいますが、本項の測定はハロゲンを使用していない別の箇所を、自然日射下で計測したものです。 ハロゲンランプによる加熱は、次項3-3の測定で使用しています。
3-3. 屋根表面(ハロゲン加熱=ピーク日射の再現)
測定時に雲が出て日射が弱まったため、施工部・未施工部の双方に同一のハロゲンランプで同じ熱量を与え、 条件を揃えて比較しました。真夏のピーク日射に相当する厳しい条件下での比較となります。
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| 可視光 未施工部にハロゲンを照射 | サーモ 未施工部 約90℃ | 可視光 試し塗り部にハロゲンを照射 | サーモ 施工部 約54℃/差▲36℃ |
3-4. 屋根 裏面(外側)
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| 可視光 未施工部 測定位置 | サーモ 未施工部 約42℃ | 可視光 施工部 測定位置 | サーモ 施工部 約34℃/差▲8℃ |
3-5. 室内側 天井面 ★本試験の最重要データ
鶏舎内に入り、屋根の裏面(=室内の天井面)の温度を直接測定しました。この数値が、鶏舎内の温度低減を直接裏付けるものです。
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| 可視光 未施工部の天井 測定位置 | サーモ 未施工部の天井 約34℃ 外気温+1℃ | 可視光 施工部の天井 測定位置 | サーモ 施工部の天井 約31℃外気温−2℃/差▲3℃ |
| 鶏舎内は照度が低く、また天井高が2,800mmと低いため、可視光写真では測定位置が判別しづらくなっています。 サーモ画像の測定値をご参照ください。なお可視光写真・サーモ画像とも、 同一機器により同時刻に同一箇所を撮影したものです(未施工部 14:09/施工部 14:16)。 |
3-6. 遮熱塗装による輻射熱の低減について
断熱材のない小波トタン屋根の場合、屋根が受けた熱は、そのまま室内側の天井面へ伝わります。 天井面が高温になると、天井から鶏へ向かって輻射熱(放射熱)が降り注ぎます。 鶏が受ける暑さは気温だけで決まるものではなく、この輻射熱が大きく影響します。
本試験では、遮熱塗装により天井面の温度が3℃低下することを確認しました。 これは室内の気温が下がるだけでなく、天井から降り注ぐ輻射熱そのものが減少することを意味し、 鶏が実際に感じる暑さ(実効温度)は、気温の低下幅以上に改善されると考えられます。
赤外線カメラでは、温度が高いほど白~黄色に、低いほど紫~黒色に表示されます。 試し塗り箇所と未施工箇所の境界が、色の違いとして明確に現れています。
4-1. 地上からの撮影
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| 可視光 試し塗り後の5号棟屋根 | サーモ 同一箇所。屋根面が白~黄(高温)、試し塗り部が紫(低温)にはっきり分離している |
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| 可視光 試し塗り境界部 | サーモ 白(最高温)→黄→紫(低温)と3段階の色変化で温度低減が確認できる |
4-2. 上空からの撮影(ドローン搭載赤外線カメラ)
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| 可視光 対象農場 全景(鶏舎5棟) | サーモ 同全景。5棟すべての屋根が黄色~白(高温)に発光するなか、赤矢印の先=5号棟の試し塗り箇所のみが紫(低温)。上空からでも温度低減が判別できる |
| 上空からの撮影は、農場全体を同一条件・同一時刻で撮影できるため、 比較対象(未施工の4棟)が同一画面内に写るという点で客観性が高い記録となります。 測定機器の誤差や測定時刻のずれによる影響を受けません。 |
5号棟屋根上の貯水タンクにも試し塗りを行い、温度を測定しました。 測定時、タンクは日陰の位置にあり日射を受けていなかったため、 施工部・未施工部の双方に同一のハロゲンランプで同じ熱量を与え、条件を揃えて比較しています。
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| 可視光 タンクに日が当たらないため、ハロゲンランプにより加熱して測定 | 可視光 測定対象の貯水タンク |
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| 可視光 未施工部の測定位置 | サーモ 未施工部 裏側 約55℃ | サーモ 遮熱施工部 裏側 約35℃ 差 ▲20℃ |
| タンクは足場が確保できない位置にあり、限られた体勢での撮影となったため、 可視光写真では測定位置が判別しづらくなっています。サーモ画像の測定値をご参照ください。 |
5-1. 貯水タンクの諸元
| 種別 | 寸法 | 容量 | 材質 | 基数 | 表面積/基 | 合計面積 |
| ① | 600 × 600 × H550 | 約198 L | 樹脂 | 5基 | 1.68 ㎡ | 8.40 ㎡ |
| ② | 700 × 900 × H800 | 約504 L | 樹脂 | 1基 | 3.19 ㎡ | 3.19 ㎡ |
| ③ | 2000 × 2000 × H2500(黒) | 10,000 L | 鉄 | 1基 | 24.00 ㎡ | 24.00 ㎡ |
| | 合計 | | | 7基 | — | 35.59 ㎡ |
※側面および天面の合計。底面は据置のため除外。/※③の黒タンクは今回試し塗りを実施していません。
| ③黒色タンクについて。 黒色は日射吸収率が0.90前後と極めて高く、表面温度が最も上昇します。 一方で貯水量が10,000Lと大きいため、1日あたりの水温上昇そのものは緩やかです。 問題は、夜間も水温が下がりきらず、連日の猛暑で水温が日を追って高止まりする点にあります。 また当タンクは夏季に表面の結露が著しいため、内部の水を抜いた状態でなければ施工できません。 工程上、水を空にできる日程の調整が必要となります。 |
実測値をもとに、鶏舎内の温度がどの程度低減されるかを算定します。以下、使用した式・数値・前提をすべて記載します。
6-1. 使用する物性値
| 項目 | 数値 | 出典・根拠 |
| 室内側 天井面の総合熱伝達率 h | 9.3 W/(㎡·K) | 建築・空調分野の標準値(対流+放射) |
| 空気の体積比熱(33℃) | 0.324 Wh/(㎡·K) | 密度1.16kg/㎥ × 比熱1.006kJ/(kg·K) |
| 水の比熱 | 4.186 kJ/(kg·K) | 物理定数 |
| 夏季晴天の日積算日射量(水平面) | 5.56 kWh/㎡·日 | 20 MJ/㎡·日 |
| 電力のCO2排出係数 | 0.43 kg-CO2/kWh | 全国平均値 |
6-2. 建物の容積の算出
屋根勾配を3寸(16.7°)とすると
| 建物幅 = 4.2m × cos16.7° × 2面 = 8.05 m |
| 床面積 = 77.0 m × 8.05 m = 620 ㎡/棟 |
| 軒下容積 = 620 ㎡ × 2.8 m = 1,736 ㎥ |
| 小屋裏容積 = 8.05 m × 1.21 m ÷ 2 × 77.0 m = 375 ㎥ |
6-3. 屋根から室内へ侵入する熱の削減量
小波トタンは薄鋼板であり熱抵抗がほぼゼロのため、屋根の表面温度と裏面(天井面)温度は同一とみなせます。 したがって、遮熱塗装による熱侵入の削減量は次式で表されます。
【実測条件】屋根表面 47℃ → 33℃(▲14℃)
| Δq = 9.3 × 14 = 130.2 W/㎡ |
| 1棟あたり = 130.2 × 646.8㎡ = 84,213 W = 84.2 kW |
【真夏晴天ピーク】外気35℃・日射900W/㎡を想定
実測時は雲により日射が約400W/㎡に低下していた。表面温度の上昇幅は日射量に比例するため、 未施工部の上昇は 14℃ ×(900÷400)= 31.5℃ → 屋根表面 約66~70℃。施工部の上昇はその約1/3 → 約45℃。差は▲21℃。
| Δq = 9.3 × 21 = 195.3 W/㎡ |
| 1棟あたり = 126.3 kW / 5棟合計 = 631 kW |
【最も過酷な条件】ハロゲン加熱時 90℃ → 54℃(▲36℃)
| Δq = 9.3 × 36 = 334.8 W/㎡ |
| 1棟あたり = 216.5 kW / 5棟合計 = 1,083 kW |
6-4. 換気量の算定(★実測値からの逆算)
| 本算定では、換気量を仮定値としていません。実測結果そのものから逆算しています。 実測条件において削減された熱量84.2kWが、実測された室温低下3.0℃を生じさせているのですから、 この鶏舎が実際に持つ熱の排出能力は、次のとおり確定します。 |
| 熱容量流量 = 84,213 W ÷ 3.0 K = 28,071 W/K = 28.1 kW/K |
| 換気量 = 28,071 ÷ 0.324 = 86,600 ㎥/h |
| 換気回数 = 86,600 ㎥/h ÷ 2,100 ㎥ = 41 回/h |
→ 夏季鶏舎の換気回数として一般的な範囲(30~60回/h)に収まっており、妥当な値です。
6-5. 室内温度の低減量
| 室温低下 ΔT = 削減熱量 ÷ 熱容量流量(28.1 kW/K) |
| 条件 | 削減熱量/棟 | 計算 | 室内温度の低下 |
| 実測条件(外気33℃・雲あり) | 84.2 kW | 84.2 ÷ 28.1 | ▲3.0℃ |
| 真夏晴天ピーク(外気35℃) | 126.3 kW | 126.3 ÷ 28.1 | ▲4.5℃ |
| 最も過酷な条件 | 216.5 kW | 216.5 ÷ 28.1 | ▲7.7℃ |
※1行目の「▲3.0℃」は、実測された室内側天井面の温度差(34℃→31℃)と一致します。 すなわち本算定モデルは実測によって検証済みであり、2行目以降の予測値もこの検証済みモデルによるものです。
換気量が変化した場合の感度(真夏晴天ピーク条件)
| 換気回数 | 換気量 | 熱容量流量 | 室内温度の低下 |
| 30 回/h | 63,000 ㎥/h | 20.4 kW/K | ▲6.2℃ |
| 41 回/h(本農場の実測値) | 86,600 ㎥/h | 28.1 kW/K | ▲4.5℃ |
| 60 回/h | 126,000 ㎥/h | 40.8 kW/K | ▲3.1℃ |
7-1. 算定の考え方
遮熱塗装により日射の吸収率が低下すると、その分だけ1日にタンク内の水へ入る熱量が減少します。 この熱量の減少分を、水の熱容量で除することで、日中の水温上昇の抑制幅が求められます。
| 前提条件 | 数値 | 根拠 |
| 等価受熱面積の算定 | 天面×1.0 + 側面×0.35 | 方位および入射角の年平均補正 |
| 日射吸収率:未施工(経年・中間色) | 0.75 | 一般的な有色塗膜の値 |
| 日射吸収率:未施工(黒色) | 0.90 | 黒色塗膜の値 |
| 日射吸収率:遮熱塗装後 | 0.25 | 高日射反射率塗料の値 |
| 吸収熱のうち水へ伝わる割合 | 60 % | 残り40%は表面から大気へ放熱 |
7-2. ① 600×600×H550/198L/樹脂/5基
| 等価受熱面積 = 0.36 + 1.32 × 0.35 = 0.822 ㎡ |
| 日射入射量 = 0.822 × 5.56 = 4.57 kWh/日 |
| 吸収削減量 = 4.57 ×(0.75 − 0.25)= 2.29 kWh/日 |
| 水への熱量削減 = 2.29 × 0.6 = 1.37 kWh/日 = 4,943 kJ/日 |
| 水の熱容量 = 198 kg × 4.186 = 828.8 kJ/K |
| 水温上昇の低減 = 4,943 ÷ 828.8 = ▲6.0 ℃ |
7-3. ② 700×900×H800/504L/樹脂/1基
| 等価受熱面積 = 0.63 + 2.56 × 0.35 = 1.526 ㎡ |
| 日射入射量 = 1.526 × 5.56 = 8.48 kWh/日 |
| 吸収削減量 = 8.48 × 0.50 = 4.24 kWh/日 |
| 水への熱量削減 = 4.24 × 0.6 = 2.545 kWh/日 = 9,162 kJ/日 |
| 水の熱容量 = 504 kg × 4.186 = 2,110 kJ/K |
| 水温上昇の低減 = 9,162 ÷ 2,110 = ▲4.3 ℃ |
7-4. ③ 2000×2000×H2500/10,000L/鉄・黒色/1基 ※今回未施工・算定値
| 等価受熱面積 = 4.00 + 20.00 × 0.35 = 11.00 ㎡ |
| 日射入射量 = 11.00 × 5.56 = 61.2 kWh/日 |
| 吸収削減量 = 61.2 ×(0.90 − 0.25)= 39.8 kWh/日 |
| 水への熱量削減 = 39.8 × 0.6 = 23.9 kWh/日 = 85,933 kJ/日 |
| 水の熱容量(満水)= 10,000 kg × 4.186 = 41,860 kJ/K |
| 水温上昇の低減 = 85,933 ÷ 41,860 = ▲2.1 ℃(満水時)/ ▲4.1 ℃(半量時) |
7-5. 飲水温度の低減がもたらす意味
鶏の飲水適温は20℃前後とされ、水温が25℃を超えると飲水量が低下し始めます。 夏季の樹脂製タンクでは水温が40℃を超えることもあり、本試験で計測されたタンク表面温度55℃とも整合します。
飲水量の低下は、飼料摂取量の低下を招き、増体・産卵率の低下、暑熱ストレスの増大、 ひいては斃死リスクの上昇につながります。水温を4~6℃下げることは、暑熱期の飲水量維持に直接寄与します。
| 貯水タンクは電力を使用していないため、本項目に省エネルギー効果は生じません。 貯水タンクへの遮熱塗装の価値は、飲用水の水温を下げることそのものにあります。 |
本農場は強制換気方式であり、屋根から侵入する熱を換気扇によって排出しています。 遮熱塗装により屋根からの熱侵入が減少すれば、同じ室温を維持するために必要な換気量が減少し、 換気動力(電力)の削減につながります。
| 本項の算定範囲について。 本算定は換気扇(強制換気)の動力低減のみを対象としています。 冷房設備の設置有無については未確認であり、算定には一切含めておりません。 冷房設備をご使用の場合は、その分の削減効果がさらに加わります。 また換気扇の仕様は一般的な大型有圧換気扇(風量40,000㎥/h・消費電力1.5kW)を用いた概算です。 実際の機種・台数・稼働時間をご教示いただければ、実機の値で再算定いたします。 |
8-1. 削減される換気量
真夏晴天ピーク時、屋根から侵入する熱 126.3 kW/棟 が削減される
| 不要となる換気量 = 126,300 W ÷(0.324 Wh/(㎡·K) × 4.5 K)= 86,600 ㎥/h/棟 |
8-2. 換気動力の削減量
大型有圧換気扇(風量 40,000 ㎥/h・消費電力 1.5 kW)換算
| 86,600 ㎥/h ÷ 40,000 ㎥/h = 2.2 台分 |
| 2.2 台 × 1.5 kW = 3.3 kW/棟 |
8-3. 年間削減量
夏季稼働時間:1日10時間 × 90日 = 900時間/年(控えめに設定)
| 16.3 kW × 900 h = 14,670 kWh/年 |
| 電気料金(25~30円/kWh)= 366,750 ~ 440,100 円/年 |
| CO2削減量 = 14,670 kWh × 0.43 kg-CO2/kWh = 6,308 kg = 約 6.3 t-CO2/年 |
| 項目 | 算定値(5棟合計・年間) |
| 年間削減電力量 | 14,670 kWh/年 |
| 年間削減電気料金 | 約 366,750円 ~ 440,100円/年 |
| 年間CO2削減量 | 約 6.3 t-CO2/年 |
| 換気扇が定速機の場合は「稼働台数が減る」形で、インバータ制御機の場合は回転数の低下として そのまま電力削減に反映されます。上記は控えめな稼働時間(1日10時間・90日)で算定しているため、 実際の稼働状況によってはこれを上回る削減が見込まれます。 |
本試験にあわせて実施した現地調査において、遮熱性能とは別に、建物の安全性に関わる事項を確認しましたので併せてご報告いたします。
9-1. 棟板金の固定不良 要対応
棟板金が歪んだ状態で取り付けられている。棟板金の下地も板金本体も固定が効いていない
| 棟板金は、そもそも歪んだ状態で取り付けられており、下地・板金本体ともに固定が十分に効いていません。 強風時には飛散するおそれのある状態です。鶏舎の屋根が損傷した場合、 飼養環境が失われ甚大な被害につながる可能性があります。 塗装による対応では解決しないため、下地からの交換をご検討ください(別途お見積りいたします)。 |
9-2. 屋根の釘浮き
屋根面に釘の浮きが多数見られる
屋根面に釘の浮きが多数確認されました。程度は軽微であり、塗装工事の際にサービス(無償)にて処置いたします。別途費用は発生いたしません。
9-3. その他の現況
| 項目 | 内容 |
| 建屋高さ | 2,800mm と低層のため、本足場は不要と見込まれます(ローリングタワーにて対応) |
| 雨樋 | 設置されていません |
| 飼養状況 | 鶏が在舎したままの施工となるため、低臭性の材料選定および作業時間帯への配慮が必要です |
| ③黒色タンク | 夏季は表面の結露が著しく、内部の水を抜いた状態でなければ施工できません |
算定結果を正しくご判断いただくため、本報告書が置いている前提と、その限界を明記いたします。
| 項目 | 内容 |
| 実測値と算定値の区別 | 室内温度低下 ▲3.0℃は実測値です。▲4.5℃および▲7.7℃は、その実測値に基づく算定値(予測)です。 貯水タンクの水温低下はすべて算定値です。 |
| 換気量の前提 | 換気量は仮定していません。実測の室温低下▲3.0℃から逆算し、41回/h を得ています。 したがって予測値は本農場の実際の換気性能に基づくものです。 |
| 屋根勾配 | 3寸(16.7°)は目視による推定です。実測により建物幅・容積が確定すれば精度が上がりますが、 容積が変われば逆算される換気回数も同じ比率で変化するため、熱容量流量28.1 kW/K は変わらず、室温低下の予測値には影響しません。 |
| 測定時の気象 | 測定時間帯は雲の往来があり、日射が安定しませんでした。日射が弱い時間帯は屋根に熱が入らないため施工部・未施工部ともに温度が上がらず、差が現れません(遮熱性能の問題ではなく、 比較対象となる熱量が存在しない状態)。本報告書には日射が安定していた時間帯の測定値と、 ハロゲンランプで熱量を揃えた比較測定を採用しています。 |
| 冷房設備・換気設備 | 冷房設備の設置有無は未確認であり、省エネ効果の算定には一切含めておりません。 冷房をご使用の場合は削減効果がさらに加わります。また換気扇の仕様は一般的な大型有圧換気扇 (風量40,000㎥/h・消費電力1.5kW)を用いた概算です。実際の機種・台数・稼働時間が判明すれば、 実機の値で再算定いたします。 |
| ③黒色タンク | 今回試し塗りを実施していません。 記載の▲2.1℃は、他タンクの実測結果と黒色の日射吸収率から算出した推定値です。 |
| 水温について | 算定値は「日中の水温上昇幅の差」であり、朝の初期水温には依存しません。 |
| 日射条件 | 夏季晴天時の標準値を用いています。曇天日は効果が小さく、猛暑日は効果が大きくなります。 |
| 継続測定 | 本試験は瞬時値による測定です。ご希望に応じ、施工後にデータロガーによる 室温の継続測定を実施することが可能です。 |
| 使用材料 | 本試験に使用した遮熱塗料は、当社が多数の材料と工法を試験した結果として到達した独自の組み合わせであり、 その内容は当社の技術情報にあたります。恐れ入りますが製品名の記載は差し控えております。 ご必要な場合は、他社への開示を行わない旨の同意書を取り交わしたうえで、関係者様に限りご説明いたします。 |
本事例を踏まえた遮熱塗装のコツ
遮熱塗装で十分な効果を得るためには、単に「遮熱性能が高いとされる塗料を塗る」だけではなく、建物の構造や使用環境、暑さの原因を現地で確認したうえで、適切な施工範囲と工法を決めることが重要です。
今回の大型養鶏場では、断熱材のない小波トタン屋根が日射によって高温になり、その熱が室内側の天井面まで直接伝わっていました。さらに、屋根からの輻射熱が鶏の暑熱ストレスを強めることや、屋根上の貯水タンクが熱せられて飲用水の温度が上昇することも課題となっていました。そのため、鶏舎の屋根だけでなく、貯水タンクも遮熱の対象として検証しています。
まず大切なのは、本施工の前に試し塗りを行い、施工部分と未施工部分を同じ条件で比較することです。この事例では、自然日射下において未施工部分の屋根表面が約47℃だったのに対し、遮熱塗装を施した部分は約33℃まで抑えられました。また、室内側の天井面でも約34℃から約31℃へ、3℃の低下が実測されています。貯水タンクについても、同じ熱量を与えた比較測定で、未施工部分と施工部分の間に約20℃の表面温度差が確認されました。こうした実測を行うことで、カタログ上の性能だけではなく、実際の建物でどの程度の効果が期待できるのかを具体的に判断できます。
測定の際は、天候や時刻、日射量、風の強さなどの条件をそろえることも欠かせません。曇りによって日射が弱くなると、施工部分と未施工部分のどちらも温度が上がらず、正しい比較ができない場合があります。赤外線サーモグラフィや温度計を使い、できるだけ同じ時刻・同じ機器・同じ条件で測定することが、信頼できる検証につながります。必要に応じて施工後もデータロガーなどで継続測定を行うと、時間帯や天候による変化も把握しやすくなります。
また、遮熱塗装を検討するときは、屋根の状態を事前に点検する必要があります。今回の現地調査では、棟板金の固定不良や屋根の釘浮きも確認されました。下地や板金そのものに問題がある場合、塗装だけでは解決できません。先に必要な補修を行わなければ、塗膜が早期に傷んだり、強風時に屋根材が飛散したりするおそれがあります。高圧洗浄、ケレン、さび止め、下地補修などを適切に行い、屋根材の状態に合った施工仕様を組み立てることが、遮熱性能と耐久性を長く維持するポイントです。
工場や倉庫、畜舎など、稼働を止めにくい施設では、作業中の影響にも配慮しなければなりません。今回のように鶏が在舎したまま施工する場合は、低臭性の材料を選び、換気や作業時間帯、塗料の飛散防止まで慎重に計画する必要があります。貯水タンクについても、結露が発生している状態では塗膜が密着しにくいため、施工面を十分に乾燥させることが重要です。タンクの材質や色、容量、設置状況によっては、水を抜いたうえで施工する日程調整も求められます。
遮熱塗装の効果は、屋根の材質や色、断熱材の有無、建物の換気性能、日射条件などによって変わります。そのため、「必ず室温が何℃下がる」と一律に判断するのではなく、現地での試験施工と温度測定をもとに効果を見極めることが大切です。室温や天井面温度の低下だけでなく、換気設備や空調設備の電力削減、作業環境・飼養環境の改善、貯水温度の上昇抑制など、施設全体への効果を考えて施工計画を立てることが、遮熱塗装を成功させるコツです。