工場のカビ除去に毎年時間とコストをかけているのに、天井や床、保管庫の同じ箇所から再発していないか。もし心当たりがあるなら、失っているのは清掃費だけではない。製品ロス、クレーム、操業停止リスクまで含めた「見えない損失」が、少しずつ工場の収益と信用を削っている。
多くの食品工場では、発生したカビを塩素で洗浄し、除菌剤で拭き上げ、空調フィルターを交換する──ここまでは徹底している。それでも天井や梁の黒い点、排水溝まわりのヌメリ、保管庫のニオイが定期的に戻ってくるのは、「カビそのもの」ではなく、「水分と栄養を供給し続ける建物と設備」の問題が手つかずだからだ。衛生管理と建物管理が分断されている工場ほど、原因調査が甘くなり、胞子の飛散と汚染ルートを止めきれない。
この状況で清掃頻度を増やしても、増えるのは従業員の作業負荷と表面的な安心感だけだ。再発率を左右するのは、薬剤の強さではなく、屋根・天井・床・塗床・排水・換気といった「水が滞留しない構造」をどこまで作り込めるかである。本記事は、工場のカビ問題を衛生の一般論から切り離し、天井結露、屋根防水の劣化、床勾配不良、保管庫の温度差と湿度管理といった、現場で実際にカビを呼び込んでいる設備・建物側の原因を、場所別に解体する。
さらに、「清掃だけでしのぐ」「部分的に防カビ塗料やコーティングを使う」「屋根・防水・塗床まで踏み込む」の三つの対策レベルを、再発リスクとトータルコストの観点から比較し、どこまで手を入れれば自社の工場にとって最も合理的かを判断できるようにする。単なるカビ除去マニュアルではなく、「どの発生箇所が建物診断レベルの危険シグナルか」「どこから外部プロに任せるべきか」「HACCPのチェックリストに何を追加すべきか」までを一本の線でつなぎ、稟議に耐える対策ロードマップを組み立てられる内容だ。
天井・水回り・保管庫・製造ラインごとのカビの出方から、原因を逆算して建物と設備を見直せば、毎年繰り返している臨時清掃や応急処置を「一度で減らす」ことができる。この記事を読み進める時間は、そのまま「将来の大規模改修と衛生トラブルを前倒しで回避するための投資」になる。
| セクション |
読者が手にする具体的な武器(実利) |
解決される本質的な課題 |
| 構成の前半(カビの発生箇所別チェック、三大トラブル事例、水と環境条件の整理、自社でできる一次対応) |
天井・床・保管庫など場所別に原因を特定する視点、再発パターンを見抜くチェックリスト、自社清掃と専門業者の境界線 |
「なぜ同じ箇所で再発するのか」「どこが本当の原因箇所か分からない」という状態 |
| 構成の後半(建物・設備の本格対策、清掃だけvs建物も直す比較、HACCPとゾーニング、よくある誤解とFAQ) |
屋根・防水・塗床・換気を含めた改修の優先順位表、投資額と再発リスクのバランス感覚、HACCPに建物視点を組み込む具体案 |
「清掃強化しか打ち手がない」「改修の稟議が通らない」「どこまでやれば十分か判断できない」という行き詰まり |
「とりあえず漂白」の限界──食品工場のカビ問題がいつまでも終わらない理由
清掃も殺菌もやっているのに…なぜ工場でカビが再発するのか(生育環境と栄養の落とし穴)
「毎月漂白しているのに、同じ天井・同じ箇所から黒い点が復活する」。
食品工場の現場で最も多いカビ相談が、このパターンです。
ポイントは、
カビそのものより「カビが好む環境」が残っているかどうかです。
カビの生育条件を工場目線で整理すると、次の4つに集約されます。
- 温度:5~35℃(多くの食品工場の室温と一致)
- 湿度:相対湿度80%前後が継続
- 栄養:原料の粉、飛び散った油、洗浄残渣、床のひびに溜まった有機物
- 空気・空調:水蒸気がこもる、結露が出る、換気不良
ここでよくある勘違いは「殺菌剤で一度リセットすればOK」という発想です。
表面の胞子は除去できても、天井裏の結露や塗床のひび割れに残った水分・栄養源が手つかずだと、再発は時間の問題になります。
私の視点で言いますと、現場でカビが再発しているラインを調査すると、
目に見えない“水の滞留ポイント”がほぼ必ず存在しています。
| 項目 |
一般的な衛生対策 |
再発する工場で実際に残っている問題 |
| 洗浄・除菌 |
塩素系・アルコールによる清掃を徹底 |
天井裏の結露、水が抜けない床勾配、老朽排水溝 |
| 温度管理 |
室温・冷蔵温度の記録 |
屋根遮熱なしで天井付近だけ高温多湿 |
| 目視確認 |
黒い点・ヌメリの有無 |
壁内・躯体内部の漏水、塗装劣化は未確認 |
「菌を殺す前に、水と栄養のルートを断つ」。ここが、清掃マニュアルには載りにくい、本質的な再発防止の分かれ目です。
目に見える黒い点だけを追うと危険なワケ(混入・汚染・中毒リスクの実像)
黒い点=カビのコロニーは、あくまで「症状」です。
食品工場で本当に怖いのは、
目に見えないレベルで胞子が空気中を飛散し、製品や原料、保管庫内部に静かに付着することです。
→ 空調の風で胞子が拡散し、食品表面に落下
→ 洗浄時の飛沫で作業台や従業員のエプロンへ付着
→ 微細な凹凸に水分と栄養がたまり、低温でも胞子が生き残る
この状態が続くと、
製品のカビ発生、異臭(ニオイ)、最悪の場合はカビ毒による健康被害リスクに直結します。
特にHACCP対応後は「汚染ルートの特定」を求められるため、「とりあえず漂白しました」では説明がつきません。
| 追いかけている対象 |
本当にコントロールすべき対象 |
| 目に見える黒い点 |
空気中の胞子量・水分供給源・付着しやすい表面状態 |
| 1回の洗浄結果 |
再発までの期間・発生パターン(場所・季節) |
| 清掃実績 |
建物・設備状態(天井・塗料・防水・塗床の劣化) |
「カビの発生箇所は、建物のどこが弱っているかを教えてくれる“赤ランプ”」と捉えると、見える景色が一気に変わります。
衛生管理と建物管理が分断されている工場ほど、カビ対策が悪化しやすい構造
食品工場の現場では、次のような分断が起きているケースが多く見られます。
- 衛生管理:品質保証部門・工場長・ライン責任者が担当
- 建物・設備管理:総務、設備保全、オーナー側が担当
この分断が続くと、
「カビは清掃の問題」「雨漏りは建物の問題」と切り離され、根本原因にたどり着けない構造になります。
よくあるパターンを整理すると、こうなります。
| 現場で起きる会話 |
背景にある構造的な問題 |
| 「また天井にカビが…清掃を強化しよう」 |
屋根防水の劣化・断熱不良による結露を誰も見ていない |
| 「排水溝周りが臭うから薬剤を強く」 |
塗床のひび割れ・勾配不良で水と栄養が滞留 |
| 「保管庫の壁がうっすら黒い」 |
塗装劣化で表面がざらつき、洗浄しても汚れが残留 |
衛生側から見ると「カビの再発」、建物側から見ると「雨漏りや防水の寿命」として切り離されているものを、
一枚の地図としてつなぎ直すことが重要です。
- カビが天井・梁・設備上に出ている → 屋根・防水・断熱・空調の調査サイン
- カビがシンク・排水溝周りに集中 → 塗床・勾配・排水配管の調査サイン
- カビが保管庫・倉庫壁面に多い → 塗装劣化・結露・温湿度管理の見直しサイン
衛生管理のチェックリストに、
「カビの場所」と「建物側の原因候補」を紐づけて記録する運用を入れるだけでも、次の一手が見えるようになります。
漂白だけで“その場しのぎ”を続けるか、建物レベルで根本から封じ込めるか。分かれ目は、ここでの見方と連携です。
カビが出る「場所」で原因を絞り込む:天井・水回り・保管庫・製造ライン別チェック
「どこにカビが出ているか」で、建物側の原因はかなり絞り込めます。現場では、
場所=原因の地図と捉えた方が調査も対策も早くなります。
天井・梁・設備まわりのカビ:空調・換気・屋根・断熱のどこが怪しいか
天井付近の黒い点や、梁の筋状の汚れは、
上からの水分か内側の結露を疑うサインです。
代表的な原因とチェックポイントを整理します。
| 発生箇所 |
怪しい原因 |
確認のコツ |
| 天井一面の点状カビ |
屋根防水劣化・天井裏結露 |
雨天後のシミ・たわみ |
| ダクト周りの輪っか状カビ |
断熱不足・空調バランス不良 |
ダクト外面の結露有無 |
| 高所設備上面の汚れ |
換気不足・粉体付着 |
製造中のみ湿るかを観察 |
私の視点で言いますと、
高所のカビは「空調+屋根」の両方を見ないと外れやすいです。天井裏の温度と湿度を計測すると、原因がはっきりするケースが多くなります。
シンク・排水溝・水回り付近:塗床・勾配不良・排水設備の“見えにくい”不具合
シンク周りや排水溝の黒ずみは、「洗浄不足」より
水が引ききらない構造不良が元凶になりがちです。
- 塗床の割れ・ピンホール
→ 水と有機物が入り込み、下地で増殖
- 勾配不良
→ 水たまりが定常化し、胞子が常に栄養と湿度を得る
- 排水溝の深部・トラップ周り
→ バイオフィルムが形成され、ニオイとカビ源に変化
洗剤や除菌剤で表面をきれいにしても、
「床のひび」「コーキング切れ」を直さない限り再発率は高い状態が続きます。
冷蔵庫・保管庫・倉庫:温度差と湿度管理、保存・保管方法の死角
冷蔵・冷凍エリアのカビは、
温度よりも温度差が鍵です。
- 扉周り・パッキンのカビ
→ 外気との温度差で結露→水分と栄養が付着
- 壁面の点状カビ
→ 断熱材の劣化、スチール棚との接触部の冷え
- パレット直置き保管
→ 床との隙間に結露水とホコリが蓄積
冷蔵庫内の「空気の流れ」が悪いと、冷えていても湿度だけ高い環境が局所的に発生し、
原料・製品への胞子付着リスクが上がります。
製造現場と調理・加工エリア:ゾーニング不足でカビが繁殖ルートを作るケース
製造ライン周辺のカビは、
建物の弱点+人と台車の動線がセットで問題になります。
- 生原料ゾーンと加熱後ゾーンの区分が曖昧
→ 高湿度側の胞子が全体に拡散
- エアカーテン・差圧管理なし
→ 空気が一方向に流れず、カビを含んだ空気が循環
- 掃除道具の共用
→ 汚染箇所の胞子を別エリアへ運ぶ結果に
ゾーニングが崩れている工場ほど、「あちこちで散発的に再発」し、
どこが発生源か分からないカビ問題に悩まされます。場所ごとに原因候補を絞り込み、建物・設備側の調査とセットで対策を組むことが、再発防止への近道になります。
工場カビの「三大トラブル事例」から学ぶ、放置が招く損失と経済リスク
「ちょっとしたシミ」「コーキングの割れ」「高所の黒い点」——現場でそれを見逃した工場は、数年後に“設備投資レベル”のツケを払うことになります。ここでは、食品工場で実際に起こりがちな三大パターンを、損失イメージと一緒に整理します。
事例1:天井の小さなシミを放置した結果、数年後に大規模改修になった工場
原料受入付近の天井に、「雨の日だけ出る薄いシミ」。漂白してごまかし続けた結果、屋根防水の劣化に気付くのが数年遅れたケースです。
シナリオの流れはこうなります。
- 屋根防水の劣化で微細な漏水が発生
- 天井裏の断熱材が常に湿った状態になり、カビが増殖
- カビ胞子が空調気流に乗って製造エリアに飛散
- 最終的に天井・屋根一体の大規模改修+操業一部停止
私の視点で言いますと、「天井のシミ=屋根・防水の危険信号」と見て建物診断をかけるかどうかで、トータルコストが桁違いに変わります。
| 項目 |
早期発見(3〜6カ月以内対応) |
放置(3〜5年後に発覚) |
| 工事範囲 |
屋根部分補修・防水の打ち替え |
屋根全面防水+天井更新 |
| 影響範囲 |
部分的足場・短期の局所養生 |
ライン停止・エリア封鎖 |
| コスト感 |
小〜中 |
中〜大(場合によっては倍以上) |
| リスク |
カビ再発リスク小 |
製品汚染・回収リスク大 |
漂白で「色」だけ消しても、天井裏の水分が残っていれば、工場の空気中に胞子が回り続けます。天井・梁のカビは、空調・換気・屋根防水・断熱の総点検スイッチと捉える方が安全です。
事例2:水回りのコーキングひび割れから、壁面内部のカビ・腐食が広がったケース
シンク周りや排水溝まわりのコーキングが一部切れているだけ——現場では「後で直そう」で済まされがちな箇所です。しかし、ここからの染み込みは想像以上に深刻です。
- 洗浄水や原料の微量な有機物を含んだ水分が、ひびから壁内に侵入
- 下地モルタルやボードが常時湿潤状態になり、見えないところでカビ繁殖
- 金属下地の場合は腐食が進み、タイル・塗装の浮きや剥離として表面化
- 壁面内部のカビ臭が保管庫や製造ゾーンにまで拡散
水回り劣化で特に要注意なサインを整理すると、次の通りです。
- 排水溝周りの塗床ひび割れ・色ムラ
- コーキングのピンホール(針先程度の穴)
- シンク下収納・点検口を開けたときのカビ臭
- 清掃しても取れない「床目地の黒ずみ」
これらは「清掃の問題」ではなく、「水が溜まりやすい構造」の問題です。床勾配の不良や塗床の劣化があると、いくら除菌しても湿度と栄養が残り、カビが常設の居場所を持ってしまいます。
事例3:HACCP導入後も見落とされた高所カビと、製造ラインへの飛散リスク
HACCPで手順書やチェックシートを整備しても、「高所」「天井裏」「ダクト外面」は点検の死角になりがちです。あるケースでは、製造ライン直上の梁に付着したカビが、空調と人の動線に合わせて飛散ルートを作っていました。
- 高所足場が必要なため、定期清掃の対象から外れていた
- 空調の吹き出し方向と梁の位置が重なり、胞子が製品側へ拡散
- 目視検査では見つからない微量汚染が続き、最終的にクレーム増加で調査開始
- 調査後に高所洗浄+天井面塗装+空調バランス見直しを実施し、再発が収束
高所カビを見落としやすい工場の特徴をまとめると、次のようになります。
- ゾーニングは決めているが、空調バランス(陽圧・陰圧)が把握できていない
- 天井点検口が少なく、天井裏の湿度・結露状態を確認していない
- 外壁や屋根遮熱をしておらず、夏冬の温度差が大きい
- 清掃計画が「床・腰高まで」で終わっている
HACCP書類上は「清掃済」「点検済」になっていても、建物・設備まわりの情報がシートに載っていなければ、高所カビは検査の網をすり抜けます。高所・天井の黒い点は、単なる見た目の問題ではなく、「空気中の胞子ルートができている」サインと考えておく方が、食品工場としては安全圏に近づきます。
専門家がまず見るのは「カビ」ではなく「水」──発生条件・湿度・水蒸気のプロ視点
「カビ菌そのもの」をにらんでも、工場の再発は止まりません。現場でカビを本気で潰す時、プロが最初に探すのは
水分・湿度・水蒸気の流れです。カビは“汚れた水回り”ではなく、「見えない結露」と「たまらないはずの水」がたまっている環境で増殖します。
カビの発生条件を“工場目線”で分解する(温度・湿度・有機物・空調の関係)
食品工場でカビが発生・繁殖しやすい条件を、運用と設備の両方から整理すると次の通りです。
カビの4条件と工場での具体例
| 条件 |
工場での典型的な箇所・状態 |
見落としポイント |
| 温度 |
20~30℃前後の製造エリア |
夏場の屋根直下で天井温度だけ高い |
| 湿度・水分 |
相対湿度70%超、結露、水はね |
天井裏・ダクト外面の結露水 |
| 栄養(有機物) |
原料の飛散、製品カス、油、粉 |
床のひび割れ・塗床の欠けへの蓄積 |
| 空気・胞子の供給 |
空調風・陰圧陽圧の乱れ |
高所カビからの飛散・拡散 |
特に食品工場は「水を使う」「栄養が豊富」「人と台車が常時動く」環境のため、
一度カビが付着した箇所が“胞子の発信基地”になりやすいのが特徴です。私の視点で言いますと、天井や梁の一点にカビを見つけた時点で、もうその周囲の空気はかなりの胞子で汚染されていると考えた方が安全です。
結露・水蒸気・換気不足がつくる生育環境:食品工場で典型的なパターン
食品工場特有の「カビ温床パターン」は、水蒸気と温度差がセットで起きているケースです。
- 加熱調理エリアから大量の水蒸気
- 屋根・天井の断熱不足で表面温度が低い
- 換気量不足や空調バランス不良で水蒸気が滞留
この3つが揃うと、
天井・梁・ダクト外面で結露→ポタポタ滴下→床や機器背面が常時湿潤状態になり、清掃しても再発するカビの「ベルトコンベア」が完成します。
よくあるのは、冷蔵庫や保管庫の出入口まわりです。冷気が漏れ、外側が温かい空気とぶつかることで、枠周り・天井の一点だけ常に結露し、
目線より上のカビ汚染が製品への落下・飛散リスクになっていきます。
「防カビ塗料・コーティングだけで安心」は一部業態にしか当てはまらない
防カビ塗料やコーティングは、
あくまで“仕上げの一押し”です。水分・湿度の問題を放置したまま塗っても、現場では次のような結果になりがちです。
- 24時間湿っているシンク周りの塗装 → 数カ月で剥離し、ひび割れに汚れと水が溜まる
- 結露する天井に防カビ塗装 → 施工直後は白くても、数年でシミとカビが再発
- 排水勾配不良の塗床 → 水たまり部分からニオイとカビが再発・増殖
効きやすいのは「一時的に濡れるが、普段は乾燥状態を保てる環境」だけです。食品工場のように水を頻繁に使用し、湿度が高く、原料や製品カスといった栄養が豊富な環境では、
- 屋根の遮熱・防水で天井温度と結露リスクを下げる
- 塗床や排水計画を見直して水が残らない床環境にする
- 空調・換気で水蒸気を速やかに排出する
といった
建物・設備側の対策とセットで初めて、「防カビ塗料の効果が長持ちする土台」ができます。
カビを「汚れ」とだけ見るか、「水と温度が暴れているシグナル」と見るかで、その後の投資額と再発率は大きく変わります。
自社でできる一次対応:カビ除去の手順・清掃アイテム選び・調査の順序
「また天井に黒い点…」と写真を撮る前に、工場長が押さえておきたいのが、この“一次対応の型”です。ここを外さなければ、無駄な清掃や薬剤コストをかなり削れます。
どこまで自社清掃で対応し、どこから外部プロに任せるべきかの判断軸
私の視点で言いますと、判断を迷う現場ほど作業範囲とリスクの線引きがあいまいです。まずは次の3軸で区切ってください。
- 発生場所:高所・天井裏・壁内か、手が届く範囲か
- 広がり方:点在か、面状か、繰り返し同じ箇所か
- 背景リスク:雨漏り・結露・排水不良の疑いがあるか
| 自社で対応すべきケース |
外部プロを優先すべきケース |
| 手が届く壁・床の点在カビ |
天井・梁・ダクト外面のカビ |
| 1~2回目の発生 |
毎シーズン同じ場所で再発 |
| 水ぬれ要因が明確(単発の漏水) |
雨天時や製造中のみ濡れる箇所がある |
| 塩素系で除去後、24時間で再発しない |
除去後すぐ結露・湿り気が戻る |
「高所+再発+水の原因不明」の3つがそろったら、建物診断レベルで危険シグナルと考えてよいです。
カビ除去の基本手順と、ワイパー・ブラシ等の清掃アイテム活用のコツ
一次対応で大事なのは、
“こすらず落とし、飛ばさない”ことです。胞子を空気中へ飛散させない段取りを組みます。
- 手順1:製造停止・対象エリアの簡易封鎖(ビニール・養生)
- 手順2:乾いた状態でのHEPAフィルター付き掃除機吸引
- 手順3:塩素系やアルコール系による湿布処理(噴霧より“浸す”)
- 手順4:スクイジー・フロアワイパーで一方向にかき集めて回収
- 手順5:廃液・ウエスを密閉廃棄し、最後に清水拭き+乾燥
アイテム選びのポイントは次の通りです。
- 長柄スクレーパー・ブラシ
高所や梁は、ゴシゴシではなく「なで落とす」程度の圧で使用。強くこすると付着している塗膜を痛め、ひび割れから水分が入り込みやすくなります。
- フロアワイパー+使い捨てシート
塗床や排水溝周辺のヌメりを取る時は、ブラシよりワイパーの方が“回収量”が読みやすく、再発箇所をマッピングしやすいです。
- 送風より“乾燥”を優先
扇風機でむやみに送風すると胞子が拡散しやすいので、可能なら除湿機+空調で湿度を下げながら静かに乾燥させます。
調査の順序:カビの「場所」から設備・建物側の原因を逆算するチェックリスト
一次対応の本丸は「どこを直せば再発しないか」を見抜く調査です。カビの出た場所ごとに、次の順で確認すると原因を絞りやすくなります。
- 天井・梁・ダクトまわり
- 雨天時にシミや点滴が増えないか
- 屋根防水・折板の劣化年数
- 夏場の屋根直下の表面温度と工場内温度差
- 空調吹き出し口付近の結露跡有無
- シンク・排水溝・床
- 床勾配:水が3分以内に排水口へ流れ切るか
- コーキング・塗床のひび割れ、浮き
- 排水トラップの詰まり・逆流履歴
- 毎日“乾く時間帯”があるか(常時湿りっぱなしは要注意)
- 冷蔵庫・保管庫・倉庫
- ドア周りゴムパッキンのカビ・劣化
- 開閉頻度と庫内湿度の変動
- 冷たい壁面に結露水が垂れた跡
- 原料・製品の段ボールを壁からどの程度離しているか
- 製造ライン・加工エリア
- 温冷機器が近接していないか(温度差結露)
- 人と台車の動線が汚れゾーンをまたいでいないか
- 空調の吸い込み口と吹き出し口の位置関係
このチェックリストで「水分がとどまる場所」を特定してから、次の建物・設備側対策に進むと、清掃のやり直しが激減します。
建物・設備側の本格対策:屋根・天井・床・塗装を見直す「根本解決策」
「漂白しても毎年同じ場所にカビ」なら、現場で起きているのは“汚れ”ではなく“建物トラブル”です。ここからは、工場長が稟議しやすいレベルまで分解して、屋根・天井・床・壁のどこをどう直すとカビ再発が止まるのかを整理します。
屋根・外壁・防水の劣化が食品工場のカビを呼ぶメカニズム
カビのスタート地点として多いのが「天井のシミ」と「梁まわりの点カビ」。元をたどると、屋根・外壁・防水の劣化が原因になっているケースが目立ちます。
ポイントは3つあります。
- 屋根・外壁からの微細な漏水
- 屋上防水のピンホールや亀裂
- シーリング目地の劣化からの浸水
これらが続くと、天井裏の断熱材や下地が常に湿った状態になり、
目に見えるカビは「最後に顔を出した症状」にすぎない状態になります。
屋根・防水劣化の“カビシグナル”は、清掃では消えない場所に出ます。
発生位置と疑うべき箇所の関係は、現場では次のように見ています。
| カビの場所 |
建物側でまず疑う箇所 |
| 天井のシミ+点カビ |
屋根防水の切れ・笠木まわり・配管貫通部 |
| 高所梁の片側だけ黒ずみ |
外壁目地の劣化・庇まわりの漏水 |
| 天井裏点検口周辺のカビ |
屋上ドレンつまり・立ち上がり防水不良 |
私の視点で言いますと、「天井カビを見たら屋根と外壁の劣化年数をセットで確認」が、工場カビ調査の基本動作になっています。
屋根遮熱・空調・換気改善で、天井結露とカビリスクを下げる考え方
食品工場で厄介なのが、
雨漏りではなく“結露由来の水分”です。特に夏場・梅雨時は「屋根裏がサウナ・室内は冷蔵庫」という温度差で、天井裏が常時びしょ濡れになることがあります。
カビを狙って減らすなら、次の順番で検討すると無駄が出にくくなります。
- 屋根の遮熱塗装や断熱で「外皮の温度差」を小さくする
- 空調・換気のバランスを見直し、湿った空気を滞留させない
- 天井裏の局所換気(ファン・吸気口)で“水蒸気の逃げ道”をつくる
遮熱で屋根表面温度が大きく下がると、天井裏の結露量も目に見えて変わります。現場の計測では、遮熱前後で屋根裏温度が10℃前後下がるケースもあり、その結果「梅雨〜夏の天井結露がほぼ消え、カビ清掃の頻度が落ちる」傾向が出ます。
ポイントは、防カビ塗料に飛びつく前に
“温度と湿度の段取り”を付けることです。
塗床・排水計画・シンクまわりの改修で、水が“溜まらない”製造現場をつくる
床のカビ・ぬめりが慢性化している工場は、洗浄剤より「水の流れ方」を疑った方が早いことが多いです。
特に食品を扱う現場で問題になるのが、次の組み合わせです。
- 塗床のひび割れ・ピンホール
- 排水勾配の不良で水たまりが残る
- 排水溝・シンクまわりの目地切れやコーキング割れ
ひび割れや目地の隙間に、原料カスや油脂が入り込み、上から水がかかるたびに
「栄養たっぷりの湿ったポケット」が出来上がります。ここがカビとニオイの発生源になり、胞子や細菌が周囲に拡散します。
水が溜まらない現場づくりの基本は、次の3点です。
- 勾配の取り直し+耐薬品性の高い塗床で、洗浄後に水が残らない面をつくる
- 排水溝・シンクの立ち上がりに、連続した防水層を設けて「壁内に水を入れない」
- 定期点検で、塗床の欠け・排水目地の割れを早期補修する
「水を早く逃がす」「水を構造体に入れない」この2つを押さえると、床まわりのカビと悪臭は大きく減ります。
壁面塗装・防カビ塗料は「最後の一押し」──構造を直した上で使うべき理由
防カビ塗料や防カビコーティングは、有効な“道具”ですが、
順番を間違えると期待外れになります。食品工場では、常時濡れる・高湿度・有機物が飛ぶという条件が重なりやすく、塗膜だけに頼ると次のような問題が出ます。
- 壁内に水が回っているのに表面だけ防カビしても、数カ月〜1年で再発
- 換気不足のまま防カビ塗装をしても、結露由来のカビが止まらない
- 塗膜が膨れ・剥がれを起こし、かえって付着・汚染リスクが増える
壁面塗装・防カビ塗料を“最後の一押し”として効かせるには、次のステップが欠かせません。
- 屋根・外壁・防水の劣化をチェックし、「壁の中」に水が入っていないか確認
- 空調・換気で湿度と空気の流れを整え、「常時結露する壁」を無くす
- 床・シンクまわりの漏水ルートを塞ぎ、壁際に水が集まらないようにする
その上で、防カビ性能を持つ塗料を選べば、
「建物側の弱点を修正したうえでのコーティング」となり、再発スパンが大きく伸びます。逆に、構造を直さず塗装だけ先に入れると、数年後に「塗り直し+下地補修+防水改修」という二重投資になり、工場長の財布を直撃します。
カビを本気で止めに行くなら、薬剤や清掃の前に「屋根・天井・床・壁がカビを育てる装置になっていないか」を見直すことが、最もコスパの良い一手になります。
「清掃だけ」vs「建物も直す」:再発率とコストを比較するリアルなケーススタディ
漂白しても、数カ月後には天井に点々と黒いシミ。
財布から出ていくお金は毎年増えているのに、リスクだけは全然減らない——工場長の頭を悩ませる典型パターンです。
ここでは、現場でよく見る3パターンを
再発率・トータルコスト・事故リスクで比較します。
清掃を継続するケース:短期コストは安いが、汚染事例・事故リスクは残る
漂白剤と高圧洗浄で「見えるカビ」を落とし続けるパターンです。
人件費と薬剤費だけを見ると安く見えますが、
水分・湿度・結露の原因は一切手つかずのため、胞子は空気中に残り続けます。
清掃継続だけの典型的な状態は次の通りです。
- 再発頻度:梅雨・夏・繁忙期の年1~数回
- 清掃コスト:1回あたり作業員×数時間+薬剤費
- 見落としがちな被害
- 高所カビから製品への飛散
- ニオイクレームや返品
- 従業員のアレルギー・咳
私の視点で言いますと、
「毎年同じ箇所を漂白している工場」は、たいてい天井裏や屋根防水の調査が一度も行われていません。
部分的な塗装・防水・コーティング導入:どこまでリスクを下げられるか
次に多いのが、「問題箇所だけをピンポイント改修」するパターンです。
代表例は、天井面の防カビ塗料や、水回り周辺の部分防水、床の一部だけ塗床補修といった対策です。
このレベルで期待できる効果は
「再発スピードを遅らせる」「清掃頻度を減らす」ところまで。
根本となる屋根遮熱や換気不足を放置すると、
塗膜の裏で結露→カビ→膨れが起き、数年後にやり直しになるケースもあります。
対策レベル別のざっくり比較は次の通りです。
| 対策レベル |
初期費用 |
再発スパンの変化 |
事故・汚染リスク |
| 清掃のみ |
低い |
数週間~数カ月 |
高い |
| 部分改修 |
中程度 |
1~数年 |
中程度 |
| 建物全体も見直し |
高い |
5~10年スパンで管理 |
低い |
部分改修は、
「カビの出方を観察しながら、次の投資判断までの時間を稼ぐ」位置づけで考えると現実的です。
屋根・防水・塗床まで踏み込む場合のイメージ(工期・作業影響・トータルコスト)
最後が、屋根防水・遮熱塗装・塗床・排水勾配まで踏み込むパターンです。
ここで初めて、専門家が見る「水の通り道」「結露条件」を壊しにいくので、
カビの再発率そのものが一段下がります。
代表的な工事項目と、工場への影響イメージは次の通りです。
- 屋根遮熱+防水改修
- 工期: 数日~数週間(外部作業中心で操業を止めにくい)
- 効果: 屋根直下の温度低下→天井裏の結露減少→高所カビリスク低下
- 塗床+排水勾配修正+排水溝まわり補修
- 工期: エリアごとに分割すれば、休日+夜間でローテーションも可能
- 効果: 水たまり・微細なひび割れに滞留する水分と栄養源を断ち、増殖箇所そのものを削減
- 壁面塗装・コーキング打ち替え
- 工期: 数日~
- 効果: 壁内への水分浸入を止め、目に見えない内部カビ・腐食を抑制
ポイントは、
「一気に全面改修」か「年次計画でエリアごとに進めるか」を決めることです。
工場のキャッシュフローと操業スケジュールに合わせて、次のように組み立てるケースが増えています。
- 1年目: 調査+屋根遮熱・防水(操業影響が少ない部分から着手)
- 2年目: 高リスクの製造ライン周辺の塗床・排水改修
- 3年目: 残りエリアの床・壁面整備と防カビ塗装
清掃だけで「その場しのぎ」を続けるか、建物を含めて「カビが育ちにくい環境」に変えていくかで、5年後・10年後の
総支出と事故リスクはまったく別物になります。
HACCP時代の食品工場が見直すべき「カビとゾーニング」の新しい考え方
「カビそのものより、カビを“運んでいる空気と人”を押さえた工場が勝つ」──HACCP以降、現場でじわじわ効いているのはこの発想転換です。
ゾーニングと空調バランスが崩れると、カビ胞子が施設内を回り続ける
HACCPでゾーニング図は作ったのに、
空調バランスが設計と逆行している工場は少なくありません。陰圧・陽圧の取り方を間違えると、汚れた空気ごとカビ胞子がクリーン側へ吸い込まれます。
代表的な“危険サイン”は次の通りです。
- 扉を開けた瞬間、ニオイや湿気がきれいなエリアへ流れ込む
- 高湿度エリアの天井・梁にカビが発生し、隣室の天井にも点在
- 空調吹出口の周囲だけ結露・汚染が集中している
この状態で天井カビを除去しても、
空気の流れが汚染ルートのままなので再発します。特に、加熱調理・洗浄工程から出る水蒸気が陰圧側へ“吸われ続けている”レイアウトは要注意です。
空調・換気計画を見直す際は、少なくとも次の3点をセットで確認しておくと、カビ対策の精度が一気に上がります。
- 部屋ごとの設計湿度と実測湿度
- 給気・排気の位置と風量バランス
- 天井裏・ダクト周辺の結露・漏水の有無
調理・加工・保管の動線とカビ飛散:“人と台車”が運んでしまう汚染ルート
工場内のカビは、空気だけでなく
人と台車に“付着して運ばれる”ケースが非常に多いです。私の視点で言いますと、カビ相談のある工場を歩くと、動線と汚染箇所のマッピングだけで、おおよその原因が読めることが少なくありません。
動線が「カビの繁殖ルート」になっている典型パターンを整理すると、下記のようになります。
| ケース |
動線の問題 |
カビ拡散の実態 |
| 1 |
洗浄エリア→保管庫が同一動線 |
濡れた床の胞子がタイヤに付着し低温保管庫まで運ばれる |
| 2 |
原料受入と製品出荷が同一通路 |
外部の胞子・土壌菌が製品側ゾーンまで侵入 |
| 3 |
メンテ作業員が高所→製造ラインを連続移動 |
天井カビが作業着・工具経由でライン上に落下 |
ポイントは、
「人と台車がどの順序でどのゾーンを通過しているか」を、図面ではなく実際の動きを見て確認することです。清掃・除菌を徹底しているつもりでも、汚染ゾーンを通った靴やキャスターが、そのまま製品ゾーンに入っていればカビは増殖を続けます。
次のチェックを実施すると、動線由来のリスクが洗い出しやすくなります。
- 原料と製品の通路・扉がどこで交差しているか
- 高湿度エリアを通らずに保管庫へ行けるルートがあるか
- メンテ・業者用の出入口がゾーニングと整合しているか
HACCPのチェックシートに「建物・塗装・防水」の視点をどう組み込むか
多くの工場では、HACCPのチェックシートが
作業手順と記録中心で、建物・設備の劣化が抜け落ちています。ところが、カビの再発原因は「床のひび割れ」「防水切れした天井」「保管庫周りの塗装剥がれ」といった
構造側の不具合であることが非常に多いのが現場の実感です。
最低限、次のような項目をHACCPの定期確認に組み込むと、カビの“芽”を早期に潰せます。
| チェック項目 |
見る場所 |
注目ポイント |
| 天井・梁のシミ |
高所全般 |
同じ箇所に毎回湿ったシミが出ていないか |
| 床・塗床のひび割れ |
水回り・排水溝周辺 |
ひびに黒ずみ・ヌメリが溜まっていないか |
| 壁・シーリング劣化 |
シンク周り・保管庫 |
コーキング割れから水分が回っていないか |
| 屋根・外壁からの漏水痕 |
天井裏・柱際 |
雨のあとに限定した湿り・カビがないか |
これらは衛生管理というより
建物管理の領域ですが、食品工場のカビ除去・再発防止を考えるなら、HACCPの仕組みに取り込んでしまった方が、結果的に事故リスクとトータルコストを抑えやすくなります。
相談の現場から見えた「よくある誤解」と、工場カビ対策のよくある質問
「とりあえず塩素で真っ白になったから大丈夫」という考えが危険な理由
見た目が真っ白になった瞬間、「やり切った感」が出るのが塩素系洗浄の怖いところです。現場で多いのは、次のようなパターンです。
- 黒い点=目に見えるカビのコロニーは消えた
- しかし天井裏や塗膜の奥、目地内部には胞子が残存
- 結露や湿度が戻った途端に再発、生産ライン近くへ飛散
ポイントは
「色が消える=カビリスクがゼロ」ではないことです。塩素は漂白力が強く、汚染を“隠す”効果もあるため、検査や監査のときに問題を見落とすリスクも高まります。
自主管理で塩素を使う場合は、最低でも次をセットで行うと安全度が上がります。
- 清掃前後で発生箇所の写真記録
- 臭気・ぬめりの残り具合の確認
- 天井・床・壁の水分状態の確認(結露・濡れ・乾燥具合)
- 再発までの期間をメモし、建物側の原因調査のトリガーにする
色だけを追う清掃は「帳尻合わせ」でしかありません。カビ対策として評価されるのは、
汚染リスクをどれだけ減らしたかです。
「賃貸だから建物はオーナー任せ」で本当に良いのか(責任とリスクの線引き)
食品工場を賃貸で使っている現場で、とても多い誤解です。
- 「屋根の漏水はオーナー持ちだから、自分たちは清掃だけしておく」
- 「外壁のクラックは設備じゃないからノータッチ」
このスタンスのままだと、カビ汚染が起きたときの
矢面に立つのは工場側になります。製品汚染やクレーム、リコール、操業停止は、原則としてテナント側の衛生管理の問題として扱われるからです。
責任分担を明確にするためのポイントを整理すると、次のようになります。
| 項目 |
オーナー側の責任が重い領域 |
工場側の責任が重い領域 |
| 構造躯体 |
屋根漏水、外壁ひび割れ、防水切れ |
不具合の早期報告、点検記録 |
| 内装・設備 |
基本仕様の状態維持 |
塗床の損耗、排水溝の詰まり、清掃不良 |
| 衛生・品質 |
建物性能上の欠陥説明 |
カビ除去、ゾーニング、HACCP運用 |
賃貸だからこそ、
「カビの発生箇所」と「建物不具合」を写真と一緒に記録し、オーナーと共有しておくことが重要です。改修費をどこまで負担するかは交渉になりますが、記録がなければ「気づかなかった」で終わります。
私の視点で言いますと、早い段階で小さな防水補修や塗床補修をオーナーと折半するケースの方が、数年後に大規模改修と長期操業停止を食らうケースより、トータルコストは明らかに少ない印象があります。
相談メールの実例から読む、工場長・従業員が本当に不安に感じているポイント
実際の問い合わせ文面を要約すると、表向きの相談内容と、裏側の本音は少し違います。
よくある表現
- 「天井にカビのようなシミが出ていて不安」
- 「製造ライン上に黒い点が点在している」
- 「保管庫のニオイが取れない」
その裏にある本音
- 「HACCPの監査で指摘されないか」
- 「従業員から“この環境で食品を扱って大丈夫か”と疑われている」
- 「どこまで対応すれば、責任を果たしたと言えるのか分からない」
工場長や衛生管理責任者が一番気にしているのは、
「どのラインを超えたら危険シグナルか」という判断基準です。次のチェックに複数当てはまるなら、建物レベルの調査を入れた方が安全です。
- 天井・梁・ダクト周りに毎年同じ場所で再発するカビがある
- 排水溝まわりの塗床がひび割れ・剥離している
- 保管庫の壁・床の塗装が粉を吹くように劣化している
- 雨のあとや冷暖房切り替え時期に結露とカビがセットで出る
これらは、単なる清掃の問題ではなく、
水分・湿度を抱え込む構造的欠陥のサインになっていることが多い箇所です。
工場カビ対策に関するFAQ:原因・対策・再発防止を整理しておく
現場で頻出する質問を、原因・対策・再発防止の視点で整理します。
Q1. カビが出たら、まず何をすべきか?
- 対応順序
- 発生場所・広がり・色を写真で記録
- 周辺の水分・結露・漏水の有無を確認
- 一次対応として、食品に触れる恐れのある箇所は操業範囲を一時的に区分け
- 適切な洗浄剤で除去し、乾燥時間を確保
Q2. 自社清掃で対応できるラインは?
- スポット的で、構造にひび割れや漏水が無い
- 床や壁の表面のみ、付着したカビを除去できる状態
- 高所作業が不要、従業員の安全が確保できる
この条件を外れる場合は、
建物・設備の調査を行う専門業者と連携した方が安全です。
Q3. 再発を抑えるために、最優先で見るべきポイントは?
- 天井:屋根防水・断熱不足による結露、空調バランス
- 床:塗床の劣化、勾配不良、排水溝との取り合い
- 壁・保管庫:塗装劣化、温度差で常に「冷たい面」になっている箇所
これらの「水が集まりやすい場所」を潰していくと、
カビが繁殖しにくい環境=衛生管理しやすい工場に近づきます。清掃マニュアルの見直しとあわせて、建物側のチェックリストをHACCP文書の中に組み込んでおくと、監査にも説明しやすくなります。
執筆者紹介
工場・倉庫の外壁・屋根・防水を主要領域とする千葉市若葉区の株式会社竹山美装は、一級塗装技能士を有し、塗装工事業の建設業許可を取得した建物改修の専門会社です。公式サイトでは、工場屋根の遮熱塗装による工場内温度低下や、工場外壁改修・屋上防水などの法人向け施工事例を複数公開しており、本記事ではそれらの実務経験をもとに、清掃だけに頼らない工場カビ対策を「建物・設備側から」整理しています。