施工前は、表示面全体に白亜化が進み、赤や青などの原色域が浅く退色。印字の黒縁はにじみ、近距離でも輪郭がぼやけて読解性が下がっていました。枠との取り合いはシールの痩せ・割れにより段差や微細な隙間が生じ、上辺から雨垂れ筋が“筋道”になって残留。斜光で見ると艶ムラと細傷が多く、日中でも“白ぼけ”て見える状態でした。対して施工後は、クリヤー2コートで均一な膜厚と潤いのある艶が生まれ、赤・青の彩度が回復。白文字の“抜け”が良くなり、遠目でもコントラストが立って視認距離が伸びました。コーキング打ち替えで角・上辺の面一が整い、枠際の影が自然に。雨垂れの誘導線が断たれたことで、汚れが付きにくい外観に変化。近接では微細傷がならされて“とろみ”のある光沢、離隔では情報が一目で届く“プロ看板”の佇まいを取り戻しました。
原色の強い面ほど、適切な下地処理とクリヤーの2コートで見違えるほど蘇ります。ポイントは“削りすぎない足付け”と“温湿度管理”。印刷面は守りながら膜をのせる――このバランスが仕上がりの艶と色の深みを決めます。取り合いのコーキングも同時に整えることで、汚れの入り込みや雨水の溜まりを抑制し、仕上がりの持続性が変わります。
「とってもきれいになって良かった!看板の交換を考えていたけどこれで充分!!」 交換せずに短時間でここまで回復できた点にご満足いただき、来客動線からの“遠目の抜け”が良くなったと評価をいただきました。
工場の看板コーティングで仕上がりと耐久性を同時に高める鍵は、「診断の粒度」「下地処理のコントロール」「環境管理」「材料適合性」「取り合い(コーキング)と一体で考える」の五点を外さないことです。まず診断は“見た目”に加え、チョーキングの度合い(手に付く白粉の量)、印刷層やラミの健全性、小口の剥離、既存シールの硬化・割れ、水溜まりやすい上辺の形状などを項目立てして確認します。素材はアルミ複合板・鋼板・アクリル・ポリカなどで溶剤耐性が異なるため、IPAやシンナーでの目立たない試験拭き、クロスカットやテープ剝離での密着チェックを小面積で行い、印刷層を侵さないことを先に確かめます。洗浄は中性洗剤→純水リンス→脱脂の三段。洗浄で落ちない“薄い黒ジミ”は油膜かブリードであることが多いので、静電気除去クロスや脱脂を追加し、シリコーン由来のはじき(ピンホール・魚眼)を起こさない面を作ります。足付けは“研ぐ”のではなく“整える”発想で、極細目の耐水ペーパーやウルトラファイン相当の不織布で均一に微細傷を付け、ロゴの縁や細文字は面圧を分散して印刷層を絶対に壊さないこと。艶ムラが目立ちやすい看板は、足付けの粗さが混ざると後工程で光の乱反射が出るので、最後に全面を同番手で“ならし直し”して粗さをそろえておきます。 環境管理は仕上がりを決める分岐点です。露点差は最低でも+3℃以上(理想は+5℃以上)を確保し、基材温度が低すぎる・湿度が高すぎる時間帯を避けます。白化(ブリッシング)や曇りはこの管理不足で起こるため、結露リスクのある早朝は洗浄と養生、日中は塗布、夕方は乾燥と検査といった“時間帯の役割分担”を決めてから工程を走らせます。粉塵対策は風下に塗装面を置かない単純な配置が最善で、搬入口の稼働が多い時間帯はコート工程を外す。照明器具や配線、枠や壁面は広めに養生し、特に上辺は塗膜流れやすいのでマスキングの段差を浅くし、ヘラで面一に整える準備を先にしておきます。 材料選定は“相性”と“目的”の両軸で。印刷層やラミ面に透明クリヤーをのせるなら、屋外耐候の2液ウレタン系やフッ素系を優先し、初層は薄膜で吸い込みと艶ムラを整え、二層目で膜厚とグロスを作る二段構成が安定します。希釈は“艶を出すために薄めすぎない”がコツで、所定粘度を守ってレベリングをコントロールし、ローラーなら短毛で泡を持ち込まないもの、スプレーなら吐出量を上げすぎず近接過ぎない距離で均一に走らせて曇りとオーバーラップ痕を消します。目安の乾燥膜厚は“薄すぎず厚すぎず”のレンジで統一し、部位で厚みが変わると艶ムラの原因になります。色の抜け感を重視する場合は高グロス、汚れ目立ちを抑えたい場合は控えめグロスを選択するなど、目的に合わせたグロスコントロールも効果的です。 取り合いのコーキングは“別工事”ではなく仕上がりの一部です。既存の痩せ・割れは雨垂れの筋道と汚れ溜まりを作るため、撤去→プライマー→ノンブリード材での充填→面一成形を先行し、上辺は特に水の切れを意識します。ブリードしやすい材料を使うと後年の黒ジミの原因になるので、必ずノンブリード指定で、色も看板枠と馴染むトーンを選びます。シールとクリヤーの相性もあるため、打ち替え後は最低の養生時間を確保してから上塗りへ進み、可塑剤の移行で艶が鈍らないよう工程間隔を守ります。 視認性の最終確認は“近接”と“離隔”の二軸で行います。近接では艶ムラ・ピンホール・ダスト噛み、離隔ではコントラストと読みやすさをチェックし、斜光で表面のうねりを見ると均一性の粗が早期に見つかります。写真記録は日陰・日向・斜光の三条件で撮っておくと、引き渡し後の管理や再現性の担保に役立ちます。安全面では、高所作業車を使う場合、無理に“屋根に乗らない”戦略が看板では有効で、接触キズや転落リスクを避けつつ、作業動線の分離や搬入車両の時間調整で操業影響を抑えます。最後に、看板は“メンテのしやすさ”が寿命を伸ばすため、上辺の水溜まりを解消する微小な面木や、定期洗浄のインターバル提案までセットにすると、コーティングの美観維持と費用対効果が一段と安定します。